イントロダクション     


ゴミ拾いをして働く住民たち1989年3月、フィリピンマニラ市の北にある東洋最大のスラムと称せられるゴミ捨て場の街“スモーキーマウンテン”で撮影が始まった。ここには、約2万1千人が暮らす。
再生可能なゴミを拾い転売して生きる彼らはスカベンジャー(ゴミを拾って生活する人)と呼ばれる。老若男女にまじり働く多くの子供たち。

少年JR(ジェイアール、17才)の日常を見つめることから映画が始まる。ゴミの奪い合いの喧嘩を目撃することも多い中、猛烈なゴミの悪臭をまぎらわすためにシンナーをすうジェイアール。そんな生活の中で、彼は少女クリスティーナ(16才)と恋に落ちる。

彼女は身ごもり、周囲の反対を押しきり結婚する。生まれた息子の黄疸の薬を手に入れるために血を売りに行くジェイアール。そんな生活苦からくる喧嘩がもとで二人は別居する。

もう一人の主人公、少年エモン(13才)。小学校を3年でやめ、一家の担い手として働くようになった彼は、スカベンジャーの生活から抜けだそうと試みて、仕事を転々とする。わずかな給料の中から必ず母親に渡す貯金をするエモン。インタビューに答える母親イルミナダは「もうこんな生活はいやだ」と貧しさに涙を流す。

子供を抱える住民一年後、ジェイアールの家を訪ねると、別居していたクリスティーナと息子ももどり親子3人暮らしていた。貧しさの中でも母親として落ち着きを見せるクリスティーナ。彼女のいうところの幸せとは「一日3回食べられて、子供にミルクを飲ませられること。そして、家族がどんな時も一緒にいること」 エモンは、スモーキーマウンテン近くのジャンクショップで働きながら給料の半分を母親に渡していた。生活はあいかわらず苦しいと嘆くイルミナダ。

「フィリピンの恥部をなぜ撮影するのだ」と撮影を邪魔されることもあったスタッフは衛生状態の悪い中、病気にも苦しめられ何度となく挫折しかける。

6年もの歳月をかけて −フィルムは完成した。